都々逸と作詩

都々逸の学びと創作を中心に作詩関連や雑記、散歩写真など。

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床にひろがった日本酒(雑記)

コンビニの中には、買った商品を客が自分で袋詰する店もあります。
スーパーマーケットは以前から客が袋詰する店が多かったですが、コンビニは、マイバックの利用が推奨されるようになり、レジ袋が有料になってから客が袋詰する店が出てきたと思います。
ただし、私がよく行く店に限って言えば、客が袋詰をするコンビニは今でも少ないです。

 

さて、昨夕のことです。
私は客が自分で袋詰をするコンビニに入店しました。すると、出入口の近くに設置された袋詰用の台のところで、仕事の帰りだと思われる少し汚れた作業服のオジさんがレジを済ませた商品をちょうど袋詰しているところでした。

オジサンというより初老の男性というほうが正確かもしれませんが、ここではオジサンと呼んでおきます。

オジサンは袋詰の途中で、買ったばかりの日本酒のカップを床に落としてしまったのです。カップがすべって手から離れてしまったようです。

カップはガラスですので、床に落ちると割れ、あたり一面に破片が飛び散りました。こぼれた日本酒は床に広がってゆきます。
割れた音に気がついて、店員もすぐに駆けつけてきました。

オジサンは、
「すべって落としちゃってさ、カップ割れてさ、酒で床が濡れちゃったね、悪いね、ごめんね」
と、若い店員に謝りながら、破片を拾おうとしました。
「いいですよ。だいじょうぶですよ。片付けますので、このままでいいですよ」
と、店員は言いましたが、それでもオジサンは、
「悪いね、すまないね、床が酒だらけだね」と、何度も繰り返し、謝り続けています。

 

 

だけどさ、床に広がってしまった日本酒、そのオジさんにとって、もの凄く大事で貴重なものなんじゃないかな、と、私は思うんだよね。
たった一本しか買わなかったカップ酒。それを落として割ってしまったのは、とても残念で悔しいことだと思うんだよね。

酒好きなら分かるさ、その一本を飲むことをどれだけ楽しみにしていたか。そして、本当は一本だけじゃ足りないってこともさ……

でも、その悔しさ、無念さを押し殺して、オジサンは何度もなんども店員に謝り続けているんだよね。
私はオジサンの胸中を察し、その人柄や心根に思いを馳せ、どうにもやるせない気持ちで店を出ました。